マルタ・ゴゾの伝統的な建物の大きな特徴に「バルコニー」があります。
3種類のバルコニー
マルタ・ゴゾのバルコニーには、大きく分けて「石造りのバルコニー」「金属の柵が付いたバルコニー」そして「木造りの出窓の様なバルコニー」の3種類のバルコニーがあります。ただし、どのタイプも、台の部分は石で出来ていることが殆どです。
石造りのバルコニー
歴史的には、この総石造り(ライムストーン)のバルコニーが一番古いタイプとされています。
宮殿や一般住宅に石のバルコニーが造られるようになったのは、中世後期頃のこと。それまでは、軍事目的の為のみに造られていたそうです。
当初はシンプルな石板で造られていたバルコニーも、時を追うごとに、マルタの十字・花や葉・動物・伝説の生物などの彫刻が施された豪華なものが増え、各家の地位や権力を象徴する物へと変化していきました。
ちなみに、ゴゾ島には、この石造りのバルコニーが多いと言われています。
金属柵のバルコニー
ステイタスとしての石バルコニーの装飾が盛んであった頃、バレッタの街では、どんなに豪華な石バルコニーも、「聖ヨハネ騎士団の規定」に従うことを強いられていました。
聖ヨハネ騎士団が、街のすべての角地に騎士団にまつわる装飾を施すよう強調し始めると、バレッタの角地には、建物の角をぐるりと囲むバルコニーが造られるようになりました。それら大半のバルコニーが、石板ではなく金属製の柵が付いたバルコニーであったことから(壁の角の装飾を見えやすくするためか?はたまた鉄柵に装飾しちゃおうという魂胆か?その両方が目的か?)、バレッタでは金属柵のバルコニーが流行りだしました。こうして、バロック時代(17~18世紀)には、それまでの石バルコニーの殆どが金属柵のバルコニーに交換されました。
角をぐるりと囲むバルコニー、幅の広いバルコニー、小さなバルコニーには、金属柵が使われていることが多いです。
木製バルコニー
3種類の中では一番新しいタイプのバルコニーですが、今日のマルタの風景の中では、このタイプが一番目立っていると思います。木の部分に塗装を施す為、とにかくカラフル!マルタ中が色鮮やかになったのは、この木製バルコニーが増えたおかげと言っても過言ではありません。
しかし、この木製バルコニー、バルコニーと呼ばれているものの、実際は、ガラス窓の付いた「出窓」です。石造り・金属柵のバルコニーがオープンタイプでしたら、こちらはクローズタイプのバルコニーとでも言いましょうか。
マルタで初めて木製バルコニーが造られたのは、1679年、ヴァレッタの聖ヨハネ騎士団総長の宮殿角でした。その木製バルコニーに人々が魅了されたのか?聖ヨハネ騎士団が木製バルコニーを造るように命令したのかは定かではありませんが、その後のヴァレッタは、木製バルコニーだらけとなりました。そして18世紀にもなると、ヴァレッタの木製バルコニーはマルタ各地に伝わり、全国的な大ブレイクを果たしたのでした!
バレッタは、他の街に比べると高い建物が多い為、一つの建物のファザードに大量の木製バルコニーがあるのが特徴的です。
また、ゴゾ全体とマルタ全体を比べると、ゴゾの木製バルコニーは全体的にソフト色が多いのに比べて、マルタの木製バルコニーは赤・青・黄色などの強めの原色も多くてカラフル!という印象を受けます(どちらも緑は多いです)。
なぜマルタは木製バルコニーでゴゾは石バルコニー
一般的に、「マルタには木製バルコニーが多く、ゴゾには石のバルコニーが多い。(金属はどちらも半々)」と言われています。
某ガイドさんにその理由を聞いてみたところ、
「その昔、木材は貴重過ぎて、ゴゾ民には手が出なかったから。」
という答えが(泣)。
確かに、ゴゾに主だった林なんかないもんな…。石(ライムストーン)は掘ればいくらでも出たんだろうけど。カラッからの岩のような島…。
まぁ、結果的に、多くのアンティークな石バルコニーを壊すことなく保存できたわけですから、それはそれで良かったのではないかと。
それに、流行にはやや乗り遅れたかもしれないけれど(汗)、上のギャラリーを見てもわかるように、現在はゴゾにも木のバルコニーは沢山ありますしね♪